ファイナンシャルプランナーの東京FP:FPセンス・FPマインド第99回

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第99回「『新会社法』による排除したい株主を排除する手法?!」
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新会社法は100年振りの商法大改正によるものですから、私達が勉強するに「大変」と感じるのは当然だろうとは思うのですけど、それにしても「大改正」であり、考え方も発想も大きく転換しており、ボリュームも多く(会社法だけでも979条。加えて「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(いわゆる「整備法」もある。)」)、キャッチアップするのが本当に大変と実感しています。

受験生時代には商法の勉強に1,000時間近くかけたのですから、新会社法を学習するのに200〜300時間かかるのは(かけるのは)当り前と言えば当り前かもしれませんが…。

(1)全部取得条項付種類株式を使うと特別決議により旧株主を追い出すことが可能

新会社法は会社の自治・自由度を追いかけ過ぎており、少数株主のことを軽く見ている。大株主がその気になれば例えば定款の変更手続等により少数株主を当該会社の株主で無くすことも出来るようだ。余程しっかり身に付けておかないと、新会社法を使った少数株主追い出しの企みに負けてしまう株主も生じるのではないか。」と、企業や株主から相談を受ける立場にある者の一人として不安を感じます。

そう心配する理由は、会社法第108条(異なる種類の株式)の「全部取得条項付種類株式(同第7号)」、の制度にあります。全部取得条項付種類株式は関係する全ての株主の同意は必要なく株主総会の特別決議と種類株主総会の特別決議により制度化ができるのですが、制度化しておきますと会社はいつでも株主総会の特別決議で(種類株主総会の特別決議ではない)全部取得条項付種類株式を強制的に取得でき、既存の株主を株主でない状態にすることが可能だからです。と言いますのはこの株式の取得に対して交付する財産は現金にすることもできますし社債や新株予約権、又は他の種類の株式等にすることもできるからです。

会社が発行している株式を全部取得条項付種類株式に変更する手順は次のようになります。まず株主総会の特別決議により定款を変更して種類株式発行会社(定款により2種類以上の株式を発行できることに決めている会社。即ち、現実にはそれらのうち1種類の株式しか発行していない場合でも、もう1種類以上の株式を発行できることに定めていれば種類株式発行会社である。)になることとすると同時に、全部取得条項付種類株式を発行できることにし既存の株式をその全部取得条項付種類株式に変更することにします(会社法第108条第2項第7号)。

尚この定款の効力が生じるには更に、その種類の株式を所有する(又は所有することになる)株主による種類株主総会の特別決議(第111条第2項第1号、及び第2号第3号のケースについても。第324条第2項第1号)も必要ですので種類株主総会の決議も行います。

この定款変更が成立すると会社は既存株主の持つ株式を全部取得条項付種類株式に差替えます。

次に、再び株主総会の特別決議により全部取得条項付種類株式の全部を取得する決議を行い当該種類株式の全部を取得します(第171条、同第309条第2項第3号)。

このようにした前又は後に会社は他の種類株式を特定の個人・法人または旧株主の一部に募集割当てし発行すれば、結果として旧株主のうちの追い出したい株主の総てを追い出せたことになります。尚この場合の他の種類株式の発行を後で行うケースでは発行済株式の全てが一瞬又は一時期自己株式になっていますが、会社法はそれを問題とは考えていないそうです。

ちなみに一部の株式の取得が認められる(全部の株式ではないという意味)取得条項付株式の制度導入の為の定款変更を行うには株主全員の同意が必要となっています(第110条)。また、ある種類の株式についてその一部を取得できるところの取得条項付種類株式を発行することとする定款変更の場合も当該種類の株式を有する種類株主全員の同意を必要としています(第111条第1項)。以上から分かりますように上述の全部取得条項付種類株式を活用する方法の場合には特別決議だけで制度化でき実行できる点で(特別決議が必要であるけど、3分の2以上の多数決で、という意味)、制度化はさほど難しくないと言えます。

【コラム】
「取得条項付株式」の場合も「取得条項付種類株式」の場合も関係する全ての株主の同意が必要なのに「全部取得条項付種類株式」の場合だけ当該種類株主総会の特別決議で良しとする理由

株主にとっては不利になる株式内容の変更ですから、一部の株式だけを取得することにできるところの「取得条項付株式」も、「取得条項付種類株式」の場合も、関係する株主の同意が必要と会社法は定めています(第110条、第111条第1項)。

それに対して、会社法は下記2の観点から、ある特定の種類株式の全部について一度に会社が強制的に取得できる内容の種類株式を発行する場合、即ち全部取得条項付種類株式を発行する場合には、定款変更(株主総会の特別決議)を行い、そのうえでその定款変更に伴い不利を蒙る可能性のある種類株主による種類株主総会の特別決議を得れば「全部取得条項付種類株式」を適法に発行できることにしました(第111条第2項)。

1.特例的制度
関係する株主全員の同意を必要としないことにしたこの制度は特例的に設けられた制度であると言って良いと思います。
2.実務の要請から創った制度
そのような「全部取得条項付種類株式」の制度を創ったのは、私的整理等において100%減資を必要とする場合に、それを実現し易くして欲しいとの実務界の要請があったのに対して特段の反対意見もなかったことを受けて会社法において創設した制度だそうです(『一問一答 新・会社法』相澤哲編著、商事法務51、52頁)
3.取得対価に不満の株主に対しては、裁判所に対する価額決定請求権を付与
その代わりに反対株主についてはその経済的利益を守る為に取得価額について裁判所に価額決定の請求ができることにしています(116条1項2号)

(2)株式移転を活用して行う方法もある

上記のスキームだと株主総会の特別決議を得るのが困難とかの何らかの理由で上記の方法により難いケースにあっては、例えば株式移転の方法を使えば同様の目的を達成することができると考えます。即ち、株式移転の方法により組織再編することとし、新設する会社を全部取得条項付種類株式が発行できる会社にし、その株式を株式移転に際して既存株主に交付すれば、既存株主の所有する株式が株式移転により設立した新会社の発行する全部取得条項付種類株式に変わります。その後に他の種類株式を特定の株主(既存株主の一部を含めることもありうる)に対して時価発行すれば結果として株式移転において設立した会社の種類株式と株主の状況は前述した会社の状況と同様になります(下図参照)。その後に全部取得条項付種類株式を会社自身が取得してしまえば(対価は現金や社債にすればよい)、残る株式は時価発行により発行された他の種類株式だけになるので、前からの株主を追い出せることになる、このようなことが実行可能です。

尚この方法による場合には株式移転新設法人における自己株式取得時点で財源規制にかからないように資本剰余金の確保をしておく必要があります(第461条第1項第4号、会社計算規則第83条)。

(株)東京ファイナンシャルプランナーズ
代表取締役会長 山田 淳一郎
(公認会計士・税理士・FP)


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